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藤原緋沙子 番神の梅 (文芸書)

自分の生まれ故郷が舞台となった作品。実際に、桑名と柏崎で離れ離れに暮らす父子が交わした十年分の日記(桑名日記、柏崎日記)が物語のベースとなっている。それだけに、描かれる下級武士渡辺鉄之助とその家族の暮らしぶりは、とてもリアリティがある。しかし、如何せん、非常に切ないお話で…。柏崎市に実在する「番神堂」その周辺の描写から物語が始まるように、「番神の梅」の舞台は存在している。登場人物や陣屋に出入りする呉服屋の屋号などこそ変えてあるものの、歴史的史実、地名やその位置関係は現実のそれに忠実だ。よって、江戸~明治初期の地図と照らし合わせてみると、いわゆる「巡礼MAP」が作れてしまうほど。しかも、当時からは町並みこそ変わってしまったが、主要な街道や河川の位置は大きく変わっていない。つまり、今も物語の世界を歩くことができるというわけだ。渡辺鉄之助が暮らした陣屋は跡地に碑が残るだけだが、諏訪神社も鵜川の橋も本龍寺も、百年以上経過したこの時代に町の中にある。物語の各場面を想いながら、陣屋跡周辺を歩いてみたり、番神岬まで辿ってみたりするのも良いだろう。現在の柏崎の町と物語の舞台を、物語と史実を、それぞれ重ね合わせて楽しむことができる作品で★★★★話は逸れるが…「番神の梅」で描かれているのは1839年~1848年頃の柏崎。この後、江戸から明治へ、激動の時代に突入する。1868年、鯨波戦争。柏崎も戊辰戦争の戦火に巻き込まれることとなった。服部半蔵引いる桑名藩が、山縣狂介(有朋)黒田了介(清隆)率いる官軍と戦い、官軍を大いに苦しめた。戦いを優勢に進めながらも、結果、桑名藩は柏崎を官軍に明け渡す決断をするのが…。柏崎で生まれた渡辺家の次男慎之介は、鯨波戦争の頃26歳になってる計算だ。もし、この物語に続きがあるとしたら…この鯨波戦争で、父の意志を継ぎ立派に立ち振る舞う、慎之介の姿を見たいと思う。 番神の梅 (文芸書) 関連情報

藤原緋沙子 百年桜: 人情江戸彩時記 (新潮文庫)

さすがに藤原さんの作品です。最近同氏の出版の少ないのが気になります 百年桜: 人情江戸彩時記 (新潮文庫) 関連情報




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