Death At La Fenice: (Brunetti 1)

アメリカやイギリスでは人気のある、イタリア・ベネチアを舞台にした推理小説シリーズの第1作で、有名な指揮者がオペラの幕間に毒殺されて始まります。英語ですが日本人でも読みやすいレベルで、あまり辞書のお世話にならなくても楽しめました。

主人公の妻子持ち中年熱血警部が普通の地元民という設定なので、観光客とは異なった視点で描かれるベネチアの町の様子は新鮮です。また、オペラ座の舞台裏とか歌手達の楽屋での人間関係とかイタリアのそれぞれの地域性とか、事情を知らない者にとっては興味深い描写も多くありました。被害者をイメージするのに著者がどの実在の指揮者をモデルにしたのだろう、と想像するのも楽しかったです。ただ、ベネチアに長期在住しているとはいえ著者はアメリカ人女性で、日本人にもなじみのある内容（例えば中国について）になると、とたんに虚構性というか、ウソでしょうという感じが強くなって、結果として作品全体の信憑性、説得力がなくなっています。

一番の不満は、円安の影響か、アマゾンでもシリーズが値上がりしていることで、コストパフォーマンスがいいとは言えないことです。内容的にはどの作品も面白そうなので、読みたい気はするのですが、・・・