Sahel: The End of the Road (Series in Contemporary Photography, 3)

セバスチャン・サルガドの写真に魅了される多くの人がそうであるかも知れないように、最初に私の目に飛び込んできて心をえぐったのは盲目の女性の写真でした。芸術的な美しさと現実世界の残酷さが同居するその写真は圧倒的な力で私を惹きつけ、しばらくの間そこから視線を外す事を許しませんでした。

この写真集を開くまで私は傲慢にも自分が“世界には飢えに苦しむ人たちがいる”という事実を“知っている”と思い込んでいました…本当に恥ずかしいです。

サルガドの写真が教えてくれます。彼らは“遠い世界に存在するかわいそうな人達”ではなくあなたや私と同じように感情を持ち、痛みを感じ、幸せに生きたいと願う個々の人間なのだと。

そしてサルガトの写真は問いかけます。水が枯渇し故郷の大地は枯れ、貧困と飢餓と病がはびこる中、銃撃や戦闘に怯えなければならない人達の存在が、日々大量のエネルギーを消費し豊かな国に生きる私達と無関係だと言い切る事ができるのかと。

巻末、淡々とした注釈が続く中、ただ一ヵ所、1984年にエチオピアで撮影された、布に包まれた大人と子供の亡骸の写真に付けた注釈にサルガドの怒りや悲しみや無力感が集約されます。

“They have walked, crossing mountains, enduring hunger and cold. They have hidden and waited, clinging to hope, and have pressed onward. But why flee? Why walk so far and suffer so greatly only to end up like this? ”
「彼らは飢えと寒さに耐え山を越えて歩いた。彼らは隠れ、そして待った。希望にすがって前進した。でもなぜ逃げるのだ。ただこんなふうになってしまうためになぜそんなに苦しみ、遠くまで歩くのだ。」