「オール・アバウト・マイ・マザー」では女性の愛の深さと強さを「トーク・トゥ・ハー」では男性の視点からの愛の儚さと希望を、それぞれ描いてきたペドロ・アルモドバル監督ですが、この作品ではまた違ってほとんどが「男性」だけで構成されています。ただ、いつも通りゲイであることが根底にはありますが。これまで見てきた監督作の中で、一番サスペンス要素が強い作品。解説には「監督の半自伝的作品」とあるので、実際にこんな経験を10歳でしてきたの?と思わずにはいられませんが、まぁ、そこは大いに脚色がなされていることでしょう。それをさておいても、男同士の愛と裏切り、別にこれが男女であってもいい。だけど男同士であることが、倫理的にも、特に神学校で行われていた、ということが、物語の業の深さを物語っていると思います。そして俳優の演技力。ガエル・ガルシア・ベルナルの、いわば一人三役の演技には脱帽です。特にゲイ役はハマりすぎ。確かに、「イグナシオ」として登場するときは、すこしふっくらとした体型。でも、ゲイとしての「イグナシオ」はほっそりとして物凄くスレンダー。役者としても力量がいかんなく発揮しています。冒頭に「トーク・トゥ・ハー」の看護師役の男性もゲイで出演してたのには笑いましたが。しかし、いつもながらペドロ・アルモドバル監督の作品は濃い。作品を作るたびに濃くなってゆく。そして作品もどんどん完成度が高くて、でもエンタテイメントとしての視点でも楽しめる。とんでもない監督です。本当に、凄い作品に出会ってしまいました。満点しかないです。 バッド・エデュケーション [DVD] 関連情報
映画監督エンリケの所に脚本を持ち込んできた元親友イグナシオを名乗る青年。二人の過去をベースにした内容で、俳優志望のイグナシオはサハラという役を得るためにエンリケに取り入ろうとします。彼は本当にイグナシオなのか、そして彼が持ち込んだ脚本「訪れ」に書かれていることは真実なのか、、、?ガエル・ガルシア・ベルナルの演技が抜群にうまい!美しい顔立ちで、アイドル路線をひた走りそうなイメージがあるのに、一癖も二癖もあるアルモドバル監督の映画に主演し、しかも相当な度胸を要する役柄。彼は今後、ジョニー・デップのような俳優になっていくのではないか、と多いに期待させられます。非常に凝った作りで、現在と過去、嘘と真実が幾重にも折り重なり、最後まで飽きさせない展開です。 バッド・エデュケーション [Blu-ray] 関連情報