信濃川日出雄 ランキング!

信濃川日出雄 僕らの漫画 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

東日本大震災による震災孤児の支援を最終的なゴールに設定して集まった27人の作家の、28の作品を収めた作品集です。その成り立ちから言えば当然のことですが、作品の出来は玉石混淆。別にチャリティーの趣旨に賛同したからと言って急に作家の力量が上がるわけはないですし、素晴らしい作品が描けるわけもないのですから、ごく普通に、面白い作品もあれば、つまらない作品も載っています。また地震や津波、その後の放射能災害などの取り扱い方も様々です。かなり直接的にモチーフとしている作品もあれば、一見、何の関係があるのか分からない作品もあります。(ただし作品内容が今回の災害に関係があるかないかと、それがマンガ作品として優れているかどうかは、これもまた全くの別問題です。)ただ28の作品を一つ一つ読み進むうち、ここに作品を寄せた作家さんたちの一人一人が、それぞれにそれぞれの感じ方で今回の大災害に衝撃を受け、そこから今までとは違う「何か」を感じ取り、作品の中に表現して行きたいという、それは作家としての本能の“うずき”のようなものなのでしょうか?作家さんたち自身の衝動や感情がほとばしり、渦巻いているのが感じられました。それは正直まだまだ、おそらく作家さんたち自身にとっても未消化なもので、そこから生み出された作品群もある意味では“生煮え”なままなのですが、その“生煮え”の加減にこそ、作家さんたちそれぞのリアルがあり、また現在の私たち自身のリアルもあるのだという風に感じます。あの大震災の発生からはすでに1年以上の月日が経過しましたが、地震と津波によって引き起こされた原発災害には終わりが見えず、被災地域の復興もまだまだ緒に就いたばかりです。同じように、私たちの社会全体がまだ、2011年の3月11日から始まった大災害にどのように向き合うべきなのかを図りかねている段階ではないでしょうか。私たちはまだまだ、これからの“旅”の行き先をどこに定めたら良いのかも分からないまま、終わりの見えない“道”の途中に佇んでいるのだと思います。この作品群が“生煮え”なのは、私たちの社会そのものが“生煮え”だからで、だからこそ私たちは、見せ掛けだけの“結論”に安易に走ったりせずに、この“生煮え”な現在を噛みしめることも必要なんだろう。と、そんなことまでも考えました。同じようなレビューを書かせていただいたのですが、『あの日からのマンガ』を読みますと、しりあがり寿さんの作品などは既にただウロウロと迷っている段階をある意味、突き抜けてしまっていて、もはや「マンガ」とか「サブカルチャー」と呼ぶべき領域を超えた作品が産み出されていると感じます。で、これに比べますと(そう書くのも申し訳ないかもしれませんが(^_^;;)この作品集に作品を寄せた作家の方々は、多分まだ私たち、一般の凡人に近い感覚で、「戸惑い」や「悩み」を強く感じました。もちろん、しりあがり寿さんに「戸惑い」や「悩み」がないわけではないでしょう。むしろ一番、戸惑ったり悩んだりしているのかもしれません。(と言うか、きっとそうなんでしょうね。)けれどもそこはある種天才的な感覚で、その「戸惑い」や「悩み」から、より普遍的で力強いメッセージにまで到達することが出来ているのを感じます。一方、『僕らの漫画』では、大半はまだそこまでは到達していなくて、しかしその到達していないところが、戸惑ったりもがいたりしているところが、逆にリアルで切ないな。と感じました「まるで自分自身がそのまま投影された感じ」なんて書いたら、それは私の自意識過剰でしょうか(^_^;;。ただ、だからこそ、この作品集は多分、歴史的・記録的価値を持つものです。何十年か何百年か後の人々が、「あの災害にあって、市井の庶民は何を考え、何を感じていたのだろう?」と振り返ろうとする時、すごく貴重な資料になると思います。だからきっとこの作品集の(出版に至る経緯を含めた)本当の、歴史的な意義や価値を評価できるのは、今、同時代に生きて、同じように混乱していて、その中でも自分のお金を出してこの作品集を買っている私たちではなくて、これから何年か何十年か後に生まれて、「平成20年代とはどのような社会だったのか?」などのテーマで研究をする、歴史家や社会学者なのかもしれませんね。ぜひ50年後、100年後の時代にタイムトリップをして、そういう方々の評価を聞いてみたいものだと思います(笑)。最後に、他のレビュアーの方も書かれていますが、この本を買うこと自体がチャリティーなのですから、それを中古で買うようなことは止めた方が良いでしょう。それでは結局、『僕らの漫画』というムーブメントに参加することが出来ません。ムーブメントから独立した純粋なマンガ作品集として楽しむ価値がないわけではないとは思いますが、そうした楽しみ方は、やはりこの作品集の「芯を喰っていない」感じがします。しかしだからと言って、チャリティとしての側面ばかりを強調して、「読め・買え」と言う気にもなりません。それではまるで、個々の作品の内容や出来栄えはどうでも良いようにも感じられてしまう。そうではなくて、チャリティーも意識しつつ、自分のお小遣いからお金を出して新品の本を買って、その上でチャリティーがどうかとは関わりなく読んで、褒めたり腐したりするのが、この本の正しい楽しみ方であり、この本の楽しみ方のフルコースなのでしょう。税金を入れると950円。週刊マンガ雑誌なら3冊分ですが、十分価値があります。ぜひ多くの方に読んでいただいて、ご自分自身の“リアル”を見つめ直して欲しいと思います。 僕らの漫画 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕) 関連情報

信濃川日出雄 古代ローマ格闘暗獄譚SIN 5 (ビッグコミックス)

単行本刊行ごとに読み進めてますが,5巻の展開は全く予想外でした.まるでシンの恐るべき狂気がこのような苦しみを招き,しかるべき贖罪が必要となったかのようです.SINとなって描かれるようになった理解不能とも言えるシンの性格,行動がこの巻で劇的に生きてきます.良いシーンなので詳しくは語りませんが,サリーナとの再会は二人の思い,人生の重みがつまったすばらしいドラマです.ストーリーはしだいにヴィルトゥスとの融合が進んでおり,それが作品の完成度をより高めています.もうちょっと長く続けられると思うんですが,連載はもう終わっているわけで,それが大変残念です.第三部はあるのでしょうか? 古代ローマ格闘暗獄譚SIN 5 (ビッグコミックス) 関連情報

信濃川日出雄 茜色のカイト (Feelコミックス)

家族になることとは、相手を理解しうけいれる事とは、「決心」がなかなかできないかたぜひ、勇気を受け取ってください。 茜色のカイト (Feelコミックス) 関連情報




Loading...


ここを友達に教える