大谷羊太郎 ランキング!

大谷羊太郎 殺意の演奏 (講談社文庫 お 9-1)

大谷氏の江戸川乱歩賞受賞作。この人はあの克美 しげるの元マネージャーだったという因果な経歴の元芸能畑の異色推理作家である。本作も司会者の自殺を発端とした芸能界を舞台にしながら、社会派とは全く異なる密室トリック、不可解な動機などのネタを盛り込みながら、作者冒頭で高らかに宣言しているように、結末で論理的解決が行われてもなお、読者に二通りの異なった解釈を与え続けるという推理小説の構造自体に挑戦した意欲作である。劇中で江戸川乱歩賞の応募自体をネタにするなど、後の折原一の倒錯のロンドなどの先がけとも言える趣向もあるが、メタや叙述トリックという訳ではない。事件の犯人は怪しいのが2人だけで、中盤で一人が殺害されてしまうので、中盤で犯人は分かったも同然となるが、作者の狙いは意外な犯人ではなく、密室トリックもいわばおまけであり、何よりも登場人物達の屈折した挫折感と優越感の感情が巻き起こす人間模様から生み出される二通りの最終的な事件の真相がメインである。選評でも細部にこだわるあまり、全体としての流れがまだるっこしくなっているとあるが、まあこの最後の趣向のためには仕方ないだろう。この60年代の江戸川乱歩賞としては社会派でもなく、がちがちの本格でもない、なかなか異色の作品に仕上がっている。 殺意の演奏 (講談社文庫 お 9-1) 関連情報

大谷羊太郎 東伊豆殺人事件 (ハルキ文庫)

 「うそー!」って言いたくなるようなどんでん返しは、実は作者がトリックものを書いていた時からの得意技。今度の作品は、女性も楽しんで読めるし、あまり凝り過ぎないストーリーになってます。すっごくおすすめだし、これからも角川春樹事務所から他の作品も出してほしいな。 東伊豆殺人事件 (ハルキ文庫) 関連情報




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