Rewrite 初回限定版

この作品に対する評価は既に出そろっているだろうから多くを語る必要は無いように思う
　ので、これから先、この作品を手に入れようと考える人へ向けてレビューを書くことにする

　この作品に対して従来のkey作品と同じものと思い購入するのは少々無理がある
　メインのシナリオライターである田中ロミオは麻枝准とは全く異色と言ってもいい特色を持ったライターだからだ
　また、サブライターとして参加している竜騎士07は「ひぐらしのなく頃に」をプレイされているならわかるだろうが、ミステリーとサスペンスホラー色の強い作風を武器にしているライターである。
　都乃河氏以外のライターがこれだけ従来の路線から外れているのだから、同様の作風を求めるのは間違えなのだ。

　また、作品自体の問題として、この特徴の強すぎる三者のライターは、文体の雰囲気を統一するという事が出来なかったことも上げておかなければならない。
　複数人のライターが参加するギャルゲーでは稀に生じることだが、この作品においては、それが他の作品に比べて一目でわかるほどに乖離している。
　感覚としては、同一テーマと世界観を与えられた三人のシナリオライターがそれぞれに作品を表現した、アンソロジーに近いかも知れない。
　軽くネタバレになるかも知れないが、この作品の肝はグランドルートにある。
　そこにたどり着くまでの共通ルート、個別ルートをクリアするに辺りこの作風の違いは障害になる場合があるだろうことは否めない。

　もう一つ。これは奈須きのこ氏が雑誌のインタビューなどでも指摘していたと思うが、作中でスマホのアプリを使ったギミックが使用されている。
　これが、割と蛇足気味に使用されている上、シナリオ後半になるとほぼ出てこないというものだ。
　作品世界を表現し、プレイヤーとのリンクを「操作する」という形で行わせるこうしたゲーム性のあるギミックは往々にして良い効果を発揮する場合と悪い効果を発揮する場合がある。
　良い場合というのは、例えばシュタインズゲートのメールのようなものだ（あれはあれで、ルート選択の難しさという弊害はあったが）。
　このシステムをもう少し、うまく使えなかったものかという思いはプレイした誰もが抱くことだろう。

　最後に、☆5をつけた理由だが
　この作品は田中ロミオ渾身の一作である、と私には思われる。
　特に震災後にこの作品が出されたことには大きな意味がある。
　自然とRewriteをテーマとしたこの作品は、奇跡を前提としたファンタジー作品であることは間違いようのない事実だ。
　だが、作品全体に（少なくとも田中ロミオの担当したシナリオには）一貫して通されたテーマとメッセージ性の強さがこの作品をやる価値を生み出している。
　従来のkey作品としてやるのは辛いことと思う。
　だが、この作品は、単体として☆5をつけるに何ら遜色のない名作である。
　是非、手にとってこの作品をやり抜いていただきたい。
　田中ロミオがプレイヤーへ向けて発信したメッセージを、どうか吟味していただきたい。