赤い高粱 (岩波現代文庫)
ノーベル賞受賞の中国人作家はどんなものを書いているのか?という興味で読んだのだが、実に面白かった。
この現代文庫版は“赤い高粱一族”全5編のうち2編のみ収録されているようで、“わたし”の祖父と父の抗日ゲリラとしての一戦および祖母が酒造家の女主人として活躍する伝奇ともいえる話が主なモチーフである。
山東省の田舎を舞台とするこの小説を少し読むと、すぐにそこに高粱に囲まれたその大地の持つ魔力的な力と登場人物からほとばしるように出てくる圧倒的なエネルギーを感じる。
そうだ!一番近いのはガルシア・マルケスだ!と思ったら、解説によると莫言はマルケスを読み大いに触発されたらしい。
自然や人物の描写には熱気がこもり、あくまで骨太である。そして山東省の田舎の大地とそこに生活する人への限りない執着と愛情を見い出す。
私事だが、10年ほど前、数年にわたり仕事で中国に30数回出張し、田舎も回る機会があったのだが、本書を読むとそこで会った人達、運転手や商店主等、と片言を交わした時に感じた印象がまざまざと浮かんできた。北京や上海の都会人あるいは村上春樹を読むような若い世代とは違う、“原中国人”とでもいうような世界がそこにはあるのだ。
莫言は現代中国における検閲に必ずしも反対しないということで同業人から批判を受けたこともあると側聞し、この小説にもプロ共産党(体制)的なフレーズもあるが、私としては莫言と彼が描く人物の中に政治的な次元を超えた、もっと大きく、したたかで、エネルギーにあふれた人間を感じる。
チャン・イーモウ DVD-BOX (紅いコーリャン / 古井戸)
ハリウッド作品からオリンピック開会式まで、いまや中国における芸術監督の最高峰チャン・イーモウ監督は、こういう世界の追究により出発したのだと、あらためて考えさせられるボックス。「古井戸」では監督自身が出演。「紅いコーリャン」の原作者・莫言はその後ノーベル文学賞作家に。
紅いコーリャン [DVD]
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