こんなに優しくされたの (TENMAコミックス)

　エロティックである。とにかくもう、エロティックである。
近年、どんなジャンルにせよ上手くはあるが、そのジャンルに必要なものを感じさせない漫画が多い。
例えば、少年漫画ならば迫力、少女漫画ならば感情の表れなどだ。基本とも言えることだが、大事である。

　木静氏６年ぶりの単行本となるこれは、そんな中で"エロティック"を感じさせてくれる逸品である。
近年のエロ漫画と言えば、線が細く没個性な絵柄が多い中、ややリアル寄りのこの絵で、
ねっとりと、そしてむわりと匂いつくようなエロティックな絵を提供してくれる。
　端的に言えば、おセックスとは肉体の交わり、エロスのコミニュケーションであるが、
氏は業界でもトップクラスの圧倒的な筆致でそれを描き出している。
かの山本直樹氏とは同じ力を持ちつつも、向きが違うとでも言えばいいのだろうか。

　そんな傑作エロスが、雑誌連載時に加筆修正を加え、250頁超のボリュームとなっている。
これはファンならずとも、雑誌連載をストックしている方も買いである。
さあ見よ、読者よ、これがエロスだ。