暗黒街の弾痕 [DVD]

本作には要らないものが一つある。それは加山雄三だ。ただし、それは結果的にはである。トップシーンから叩きつけるようなジャズのドラムに乗って大型オートバイのハーレーが爆走。スリルとスピードがのっけから楽しい。しかし、作品的には諸手を挙げて素晴らしいと誉められるような作品ではない。

中谷一郎が出てきて、次に、加山にまとわりつくような視線を飛ばすのは、出て来た途端に一目で悪い方だとわかるクラブ「パロゾン」の支配人・中丸忠雄と、一目で怖い人だとわかる天本英世。そして癒し系キャラクターのミッキー・カーチス。佐藤允は、事故死の真相を知る労務者・堺左千夫をリンチしようとしたヤクザの組長・大木庄司が手にした鋲打銃も全然平気。トラックの運転席からのっそりと登場する。初期設定では正体不明だが、最後はきっと良い人に違いないと思わせる安心株である。

やっぱり佐藤允。「パロゾン」の人気歌手・島崎雪子はコーラスの三人組・若松明、高木弘、万谷治夫を引き連れているが、彼女の正体は情報を売買する香港のスパイ組織のエージェントなのだった。彼女に雇われているのが中丸忠雄、二瓶正也、桐野洋雄、天本英世である。恐らくこの組織の現地採用の条件は「日本人に見えない人」であるに違いない。

加山雄三と佐藤允、そしてミッキー・カーチスが、野球のマネっこをする爽やかなラストが良い。スポーツ感覚のアクション映画である。そして繰り返しになるが、やはり本作に加山雄三は要らなかったと思う。狂言廻しにしても馬鹿過ぎるし、第一、かっこ良くない。美味しいところは全部佐藤允に持っていかれているし、島崎雪子には相手にされないし、女に全くモテていない。岡本喜八監督は加山雄三に優しくないな、何となくだけど。その一方、沢村いき雄には優しいな、岡本監督は。これも何となくだけど。岡本監督及び佐藤允のファン向けの作品。