

ゴーストバスターズ―冒険小説 (講談社文庫)
泣ける。なんだこれ? 泣けるのがいい小説じゃない。でも、こんな意味わかんない小説で泣けるなんて思いもしなかった。行間から著者の「前へ! 前へ!」という叫びのようなものと、暗澹たる絶望が漂ってきて、泣ける。九十年代の日本で間違いなくいちばんおもしろい小説ではないだろうか。
凡百の小説家は新しい「小説」を書こうとしていない。彼らが作り出しているのは新しい「お話(ストーリー)」であって、決して新しい「小説」ではない。だけれど、その中にあって高橋源一郎はどうにか新しいものをつくりたい、と心から思っているようだ。
小説は死んでいる。まともな小説家ならそう思っている。口に出さないけれど(中原昌也のように出す人もいるけど)、みんな思っている。まともじゃない小説家は小説が死んでいることにすら気づいていない。「ゴーストバスターズ」ってなんだろう? 「ゴースト」ってなんだろう? 僕は馬鹿だからなんにもわからなかった。
作中にヒントがある。馬よりも早く走れて僕たちは追いつかれる。印刷した紙の上に潜んで世界の果てに行くことも、空中を駆ける電波に乗ってどんな遠くへも一瞬のうちに移動できる。ひとりで立ち向かわなくちゃいけない。決して滅びないもの。
ゴーストは、「ことば」? あるいは、「古い小説」? 「正義の味方の成れの果て」?
作中ではアキレスと亀のように追って追われてをやっていたけれど、それも終わった。追いつけない存在は消えた。ゴーストバスターズ。ゴーストを倒す。高橋源一郎はこの小説を持ってドンキホーテのごとく古い小説をぶっ壊しに行ったのかもしれない。
「文学なんかこわくない」の中のエッセイで、新しいものを加えられた、というニュアンスがあった。思えば現代小説家は不幸だ。小説は死んでいる。だが、「小説は死んでいる」という前提に立って小説を書くことは新しいのではないか? と思わないでもないのだが、駄目だろうか。

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